うちの子供は「いじられキャラ」なのだろうか?それとも「いじめられっ子」なのだろうか?
あなたは参観日などで、時々友達からイタズラをされているお子様の光景を目にしたことがあるのではないでしょうか?それは一見イタズラで笑いの一部にも見えます。しかし一方で、それがいじめの兆候なのではないかとも見えてしまいます。この「いじめ」と「いじり」の境界線が曖昧だからこそ生まれてしまう、なんとも言えない感情はどのような人も持っています。
今回は「いじめ」と「いじり」の見分け方についてお話ししていきます。
このページの目次
1.いじめの種類を知る
いじめといじりの違いを知る前に、まずどのようなものが一般的に「いじめ」とされているかということについて理解を深めましょう。それを理解することによってある程度、あなたのお子様が受けていることが「いじめ」なのか「いじり」なのか分別がつくようになります。
1-1.暴力によるいじめ
暴力によるいじめについては容易に想像がつくと思います。叩く、蹴る、殴ると行った行為です。最近、中学や高校の部活の顧問が部員のミスなどに対して「体罰」を行ったことがニュースに取り上げられていますが、これらも一種の暴力となります。
強い権力を持った人が、自分よりも弱い権力を持っている人を蔑み、暴力を振るって従わせるという行為は、先生だけではなく生徒間でも行われます。これらのいじめの場合は、顔にアザができたり、殴られた跡、血が出ていたりします。外傷があるので、比較的他のいじめに比べ早期発見が可能となります。
1-2.コトバによるいじめ
「お前、キモい」
「どっか行けや!」
「〇〇くんって肌黒いからうんこよな〜」
これらは言い方によりますが、言葉によるいじめの一種です。言われて嫌なこと、あなたのコンプレックスにつけ込んで、様々なあだ名や悪口を言います。これがさらにエスカレートすると、
「あんた、うちらのグループじゃねぇじゃん。どっか行けよ。お前がいるだけで目障りなんだよ!」
などと言われてしまいます。あまり無いと思われがちな女の子の間ではよくあることです。女の子は仲間意識が強いので、1つのクラス内でも5つくらいのグループ(派閥)があります。男の子の場合はコトバでのいじめより、暴力で手を出すいじめになる傾向があります。
1-3.精神的に追い込まれるいじめ
「精神的ないじめ」は、先ほどの「コトバによるいじめ」と多少似ている部分があります。主ないじめの手口は陰口です。
普通の家で両親がきちんと揃っていて、大豪邸とは言わないにしても小綺麗な家に住んでいるA子ちゃんは学校でこのように噂されます。
「A子ちゃんって母子家庭の家で、ゴミ屋敷に住んでいるんだって〜」
などとありもしない事を、本当の事実かのように周りの友達やクラスメートに噂されます。直接A子ちゃんに誰かから言われることはありませんが、周りからの冷たい視線を感じます。
コトバのいじめでは直接文句や悪口、あだ名を言われるという内容でしたが、精神的ないじめは誰かが直接本人に伝えるのではなく、周りの雰囲気や環境を変えていじめるという手法です。
「精神的ないじめ」は、誰かが告発しない限りあまり表に出ることはなく、誰が発端なのかさえも分からない、とても陰湿ないじめです。
1-4.物理的ないじめ
あなたが小さかった頃を思い出してみてください。誰しも一度は鉛筆や消しゴムを隠されて少し困った、椅子を座る寸前に引かれてしりもちをついてしまった、などという経験をしたり見たりしたことがあると思います。
最近はそれだけではなく、筆箱や上履きに油性マジックなどで落書きされることもあります。さらにひどい場合は、毎朝机に「死ね」と書かれた上に、上履きなどをトイレに流されたり、捨てられたりすることもあります。
想像がつかないかもしれませんが、それを毎朝探すために学校中を歩き回らなければなりません。私がこの文章を書く中で最も心を痛めさせられる具体例です。毎朝毎朝、月曜日から金曜日まで、卒業するまでずっと黒の太いマジックペンで「死ね」と書かれた上履きを探して、「死ね」と書かれた机に向かって授業を受けに行かなければならないのです。
これを想像しただけで「物理的ないじめ」がどれだけ精神状況に悪影響を及ぼすか、どれだけ陰湿なものか分かると思います。
ここまでで、どのようないじめがあるのか少しはイメージが湧いたと思います。これらのいじめは軽いものから重いものまで多種多様です。物を隠される1つにしても、すぐ返してもらえる一種の「いじり」もあります。そこで、どこから「いじめ」と認識して良いのかという3つのポイントをお話ししていきます。
2.複数回にわたる行為は「いじめ」
2-1.「いじり」は一瞬だけ
先ほども少し触れたように、授業が始まって一瞬だけ鉛筆を隠されるが、すぐに返してくれる場合は「いじり」になります。鉛筆を少し隠されても子供達は
「おい〜、鉛筆返せや!持ってるの、知ってるんで〜!(笑)」とたいていの場合は言います。なぜなら誰が隠したのか知っている上に、すぐに返してくれることが前提だからです。
またすぐに返してくれることが分かっている上で、おちゃらけているのであればいじりです。
2-2.「いじめ」は長時間続く
もし先ほどの「鉛筆を隠す」という行為が「いじめ」としての行為だとするとどうなるのでしょうか。鉛筆を隠した上で、授業が終わる直前に鉛筆の芯を折って返します。一度鉛筆の芯を折られると、鉛筆削りで削り直さなければノートをとることができません。いじめの場合、たいてい鉛筆だけを取られることはありません。書けるもの全て、もしくは筆箱ごと取られます。よって授業のノートを取ることはまずできません。
友達を「いじり」だけでこのように授業を受けれない状況まで追い込むでしょうか?
例えこれがいじりだったとしても、常識的、道徳的に良くない行為であるということは、ある程度の年齢であれば容易に認識するはずです。それであれば授業の1時間中ずっと書くものがない状態にはしません。当然途中で「返せよ!」と言うはずです。それを無視してまで授業1時間、友達の鉛筆を隠し続けることはいじめ以外の何者でもありません。
2-3.「いじり」は1回、「いじめ」は10回
いじりの場合、その行為は一回で終わります。例えば先ほどの「鉛筆を隠す」という行為を親友に朝の1時間目から6時間目まで延々とやるでしょうか?答えは「やらない」でしょう。もしやったとすれば3時間目で飽きます。親友もそろそろ怒るでしょう。「鬱陶しい」と言う感情が湧き上がってきます。
しかし、「いじめ」の場合は1〜6時間目まで毎日毎日同じことが起きます。毎時間、鉛筆が無くなります。「いじり」であれば一時のリアクションを楽しむためのものですが、「いじめ」は嫌がらせなので、リアクションなどどうでも良いのです。その子が嫌がることさえすれば良いのです。
そして、嫌だということを伝えても辞めてもらえないこともいじめであると言えます。
このことからも分かるように、「いじめ」は複数回続くものなのです。1回で終わるものは通常「いじり」と捉えても良いでしょう。しかし単発であったとしてもいじりとは言えない度を超えた内容のものであれば「いじめ」になります。
3.子供が言い訳をしようとするものは「いじめ」
あなたが仕事から帰って見ると子供の顔にあざがあるとします。あなたは当然のことながら
「〇〇くん、その顔どうしたの?」
と聞くでしょう。その際にあなたの子供はどのように言うでしょうか?
「うん、ちょっとね、友達と給食の唐揚げの取り合いになって喧嘩したらこうなった。」
「たまたま廊下でつまづいて、壁にぶつかったらこうなった」
この2つの会話、どちらが自然な内容か考えてみてください。廊下でこけて壁にぶつかってあざができるでしょうか?普通に考えるとおかしいです。「そんなことであざなんてできるの?」と疑問に思うでしょう。
3-1.子供が嘘をつく時の心理
1つ目の給食の時に取っ組み合いになってしまったという内容は自然なことですし、正直に原因を話しています。
一方で、2つ目のつまづいて壁にぶつかった時にアザができたという内容は高い確率で嘘をついているでしょう。なぜ「あざ」だけで言い訳をしようとするのでしょうか?内容にもよりますが、いじめられている場合、それを隠したいと言う心理が働きます。もしもいじめによってあざができている場合、非はあなたのお子様ではありません。相手にあります。それであれば原因は相手が勝手に殴ってきたことです。
しかしそれを正直に話すと、親にいじめられていることがバレてしまうのではないかと考えます。だからこそ嘘をついて、暴力ではなく自分の行為に非がある顔ように振る舞います。
子供が親にいじめられていると告白できない理由はこちらの記事で詳しく取り上げています。
ですので、子供が言い訳をする場合はその背景に何かがあるのではないのか?と疑ってみることが重要になります。
4.子供が嫌がる行為は「いじめ」
4-1.「いじり」は笑って流せる
先ほどの「鉛筆を隠される」という行為の話に戻りましょう。もしもあなたが1時間目の始めだけ友達に鉛筆を隠されて、すぐに戻ってきたとするとどう思うでしょうか?何をあなたの友達に言いますか?
「マジで困ったわ〜!やめてよな〜」
このように軽く笑って言えることでしょう。この時の返し方、感情は「いじめ」としての行為とは全く違うと思います。あなたは少しちょっかいを出されたとしか思っていません。だからこそ笑えるのです。
4-2.「嫌だ」と思うかどうかが決め手
しかしいじめであれば「鉛筆を隠される」という行為が毎日毎時間同じように行われています。その場合、あなたがいじめられている子供だとするとどう感じるでしょうか?
「もうやめてほしい。本当に嫌だ」
きっとこのように思うでしょう。誰も「もっとやってほしい」とは思いません。冗談として笑って流すこともできません。毎日同じような悲惨な行為を受けているのですから。
このことからも分かるように、「いじめ」としての行為であれば心から笑うことはできません。むしろ「もうこれ以上はやめてほしい」と思います。少しでもこの感情が心の中のどこかにあるのであれば、その行為は立派な「いじめ」として捉えて良いでしょう。
5.まとめ
子供を見ていて「あれ?いじめかな?」それともただの「いじりかな?」と思った時は今回の3つのポイントを見直してみてください。
子供が嘘をつこうとしているか?
「嫌だ」と思っているか?
これらを見直すだけで、「いじめ」と「いじり」を区別できるようになります。子供達は参観日などでも関係なくいじめもいじりも行います。だからこそ、子供たちの行動を注意深く観察してあげてください。
そして家でたくさん会話をしてください。会話をすることで矛盾することも出てきます。そのような日頃の行いが「いじめ」の早期発見につながります。