いじめがあるにも関わらず、学校には「証拠を持ってきてもらえますか?」と言われてしまったという事例は数多くあります。あなたのお子様の学校もこのような対応をされる学校の一つかもしれません。どのような学校であれ、証拠があれば話が早く解決が進むことに変わりありません。むしろ、いじめの証拠があれば、1週間もしないうちに学校全体として対応してくれるかもしれません。

今回は学校が要求してきたり、解決を促すために集めるいじめの証拠についてお話ししていきたいと思います。

2種類のいじめ解決の証拠

いじめ解決の鍵握る証拠には大きく分けて2種類あります。その違いはどれだけの証拠能力があるかということです。「証拠能力」というと裁判のみで使われるあなたには無関係の言葉のように聞こえますが、実はあなたにとって最も重要なキーワードとなります。どれだけ相手をその証拠で納得させて動かせれるかという点においては、裁判での証拠能力もいじめ解決での証拠能力も同じなのです。

ですので、いじめ解決を導くための証拠はできるだけ証拠能力が高い(相手を納得させることのできる決定的な証拠)ものを選んでいく必要があります。

1.状況証拠

2種類あるいじめ解決の証拠のうち、1つは「状況証拠」というものです。状況証拠というものは、いじめ自体があることがわかる証拠です。例えばいじめられっ子の日々の苦悩を綴った日記が良い例です。これは日々いじめられているという事実を書いて、その中にあるその子の心情も書いています。例えばこの日記の中に、

「今日、〇〇くんに僕の財布に入っていた5000円を取られた。取られないように反抗したら火のついたタバコを手に押さえつけられて火傷した。ごめんね、お母さんとお父さん。もう耐えきれないよ。いつ死ぬかずっと考えています。」

と書いてあったらどうでしょう。普通の人であれば「これは大事だ!いじめの中でも度が過ぎている!」と思うでしょう。すぐにでも解決しなければ!と思うかもしれませんが、このような文章だけでは動かない学校がたくさんあるのが現実です。語弊がないように言いますが、いじめ相談をしたその日には動いてくれる学校もたくさんあるのが現実です。しかしその一方で動かない学校もあるということです。

なぜ動かないかというと、ただのいじめられっ子が書いた日記に過ぎないからです。本当にこれが起きているのか分かりません。「いじめの存在が分からない」たったこれだけの理由で動かないのです。

2.物的証拠

一方で2種類目の「物的証拠」はすぐにでも学校を動かせることができる証拠です。1つ目の物的証拠と同じように例を挙げてみましょう。例えば探偵がいじめ調査をして、その際に5000円を取られている映像を撮ることに成功したとしましょう。さらに、被害者のいじめられっ子は抵抗して、火のついたタバコを手に押し付けられている映像も入手できたとします。

この動画を学校に提出したならば、どれだけ悲惨な状態にあるか一目瞭然です。その上この動画はデータなので、いつでも外部に流出させることが可能です。そのような状況であればすぐにでもいじめ解決に乗り出さなければ、学校や校長の名誉に関わってきます。

この事例でなぜ学校が対応したかというと、決定的な証拠があったからです。データを改ざんすることはほぼ不可能と言って良い証拠があったからです。実はこの中に、誰が、どこで、何をやったかわかる事実が含まれていたこともポイントです。

これらの情報を含ませることで学校側は誰を指導すれば良いのか分かります。証拠もあるので、ほとんどの確率で加害者が悪いこととなります。

状況証拠の3つの種類

先ほど一つの事例を出して、どれだけ状況証拠と物的証拠において、証拠能力が違うのかということをお話ししました。その中で状況証拠の方が証拠能力が低いことはお分かりになったと思います。しかし、具体的にどのようなものが状況証拠になるのかはまだ分からないと思います。

もうすでにいじめ解決のために証拠集めに走っている場合、なおさらあなたの行動が正しいか否か、不安になるでしょう。そこでこれから状況証拠隣うる具体的な3つの証拠の種類を挙げていきます。

1.いじめられっ子の証言

これは一般的な証拠としてまず挙げられるものです。「〇〇くんに××された」という相談をした場合、いじめられっ子(被害者)の証言として扱われます。日々の苦悩を綴った日記も、いじめられっ子自らが書いたもので、証拠となります。

要するに、いじめられっ子自身が事実を言うこと、伝えること、書くことすべてがこの「いじめられっ子の証言」となります。裁判で言えば、被害者側の言い分に値します。

2.第三者の証言

先ほどの一つ目は「被害者の証言」でした。2つ目は被害者を周りから見ていた人の証言です。学校内でのいじめでは、いじめられっ子のクラスメートや友達が第三者となります。彼らが「〇〇くんがAくんのことを殴っていた」などと証言すると、第三者の証言として立派な証拠となります。

また、第三者とはあなた自身、いじめられっ子の親からの証言も含みます。「うちの子供がいつも私に××と相談してくるんです」や「この前リストカットしようとしていた」などの証言も第三者の証言として扱うことができます。

3.いじめられっ子の体や所持品への傷

最後の状況証拠の種類として「いじめられっ子への傷」が挙げられます。いじめられっ子に限らず、生徒は様々なものを学校に持っていきます。上履き、鉛筆、筆箱、体操服、カバン、自転車、、、

このような所有物に落書きしたり、物自体を破損したりすると、立派な器物損壊罪という犯罪となります。また、いじめられっ子の所有物に何か手を加えるので、その痕跡は永遠に残ります。ですので証拠として扱えるようになります。

所有物の他にも、いじめられっ子の身体への傷も証拠となります。殴る、蹴る、叩くなどの暴行を受けると大抵の場合あざができます。さらにひどい場合は出血もします。もしかすると、物の角にぶつかって頭から出血するかもしれません。

このような目に見える傷はすべて証拠として扱うことができます。しかし身体への傷は自然になくなってしまいます。そこでそれを防ぐために病院に行きます。病院で医者の診断書を発行してもらいます。これはどの病院でも3000円〜5000円程度で発行してもらえます。

この診断書と他の証拠を組み合わせると、とても有効な証拠となります。

物的証拠の3つの種類

物的証拠は状況証拠に比べ証拠能力が格段に上がります。それはどのようないじめを、いつ、誰から受けていたのかが分かる証拠だからです。それであれば学校も誰を注意すれば良いか分かります。それだけでなく、証拠のレベルが高いので、世の中に情報を公開したり、裁判沙汰にしたりすることも可能です。裁判の場合、物的証拠の多さによって判決が大いに左右します。

それでは具体的に物的証拠となる3つの種類の証拠を見ていきましょう。

1.加害者が特定できる所持品への傷

先ほど状況証拠の3つの種類のうち、最後にお話しした「いじめられっ子の体や所持品への傷」では、誰か判明できない人が行なった傷でした。例えば朝学校に着いたら上履きに「死ね」と書かれていたという場合は、誰がその行為を行なったのか特定できません。ですので、このような場合は状況証拠に分類されます。

しかし、この物的証拠としての場合は、誰がその行為を行なったのか分かる証拠になります。先ほどの例でいうと、いじめられっ子の上履きに「死ね!by〇〇」と書いていれば、〇〇くんがその行為を行なったのだなと判明します。

もちろんすべてが〇〇くんが悪いのではなくて、その子もいじめられていて、やらされた可能性もあります。そのような事情からすると一概に〇〇くんが悪いとは言い切れませんが、そのような背景を除けば、誰がいじめられっ子の上履きに落書きをした(傷をつけた)のか分かります。

このように誰が所有物に傷をつけたのか分かる証拠は物的証拠に分類されます。これは加害者が判明しているため、判明していない状況証拠の場合に比べ、より有効な証拠として扱うことができます。

2.いじめ現場の音声データ

いじめ現場の音声データはとても有効な証拠です。というのも、実際にいじめが行われていて、誰がいじめているのか、どのような行為かを録音の仕方によっては読み取ることが可能となるからです。しかし、この録音の方法にはコツもあります。このコツに関して十分に留意して録音をしなければ、せっかく録音しても、ほとんどゴミ同然の価値がない証拠となってしまいます。

録音の際のコツ

ではどのようにして、いじめの録音を証拠として扱えるようにするのでしょうか?何も考えずに、そのままいじめ現場を録音した場合と、コツを理解してから録音した場合を比べてみましょう。

Aくんは他の複数のいじめっ子たちから殴る暴行を受けています。まずは工夫なしの録音を聞いてみましょう。

A:「痛いよー

誰か助けてー」

いじめっ子:「はー?このヤロー

こんなクズ、死んどけや!」

ボコッボコッ(殴る)

次は録音をする際にコツを取り入れたものです。

A:「〇〇くん、なんでこんな体育館裏に連れてきたの?」

いじめっ子:ボコッボコッ(殴る音)

A:「痛いよ!〇〇くん、やめて!殴らないで!」

この2つの例、何か違うところはありましたか?2つ目の例で黄色の線を引いた部分にポイントがあります。

状況証拠と物的証拠の違いを考えれば分かるのですが、状況証拠にはいつ、誰が、何を行なったのか分かりません。分からないというよりも、不正確です。証言はどのようにでも変えれますし、器物損傷の場合でも誰が加害者か分かりません。一方で物的証拠では、加害者が誰なのか明確です。いつ、どこで、誰が、何をしたのかも明確だからこそ、状況証拠よりも格段に証拠能力が上がるのです。

話を戻して、先ほどの録音の例のお話をしましょう。黄色の線が引かれている部分は、加害者(いじめっ子)の名前、暴行内容、場所が明確に入っています。またICレコーダーの録音履歴から日時、時間も判明します。

しかし1つ目の例では、日時、時間以外の何も分かりません。いじめられっ子が「痛い」と言っていることしか判明しないので、後からいじめられっ子がこの当時の状況を証言しなければなりません。被害者であるいじめられっ子が証言するという行為を行う時点で、この録音は状況証拠になってしまうのです。

録音の際のコツは以下の通りです。

録音のコツ
いじめっ子の名前
いじめ内容
場所

おすすめのICレコーダー

最近は様々な種類のICレコーダーが登場しています。昔からあるような大きなレコーダーからペン型のものまで様々です。どのレコーダーを使うかはケースバイケースだと考えています。

教室や登下校中にいじめられるのであれば、1日バッテリーが持つような大きなレコーダー(と言っても手のひらに収まるサイズ)をカバンやズボンの内側に入れることをお勧めします。

その際に簡単には取り出せないように、布など隠しポケットを作って、縫い付けるようにします。そして家を出る前に録音をスタートさせ、家に帰ってきてから止めます。ズボンなどの衣類に縫い付ける場合は、衣類が擦れて雑音が入らないかきちんと確認してから学校に持っていきましょう。

また、昼休みだけなど一時的にいじめを受ける場合、USB型やペン型のICレコーダーをポケットに入れておき、休み時間になる前やいじめられそうな前に録音を開始させるようにしましょう。このようなタイプのレコーダーは容量、バッテリーともに少ないことが多いです。ですので確実にいじめられる時間が分かる場合に使うことをお勧めします。

どちらの場合もICレコーダーはきちんと動作確認をしておき、何度かロールプレイをしておくことが重要です。本番でここぞという時に録音されていなかった、、、ではもったいないです。

3.いじめ現場の動画データ

実は状況証拠も物的証拠も証拠能力が低いものから順に紹介してきました。ですので、「いじめ現場の動画データ」という証拠はいじめ解決における証拠の中で最も有効な証拠となります。

動画であれば音声データ以上に現場の様子や雰囲気が伝わりますし、今まで見えていなかった部分も見えるようになります。そのような点で、いじめ解決の証拠の中で最も有力な証拠となるでしょう。

動画を撮るにしても2種類の取り方があります。

1.定点カメラ

まず定点カメラについてです。定点カメラとはその名の通り、どこか一箇所にカメラを置いておき、いじめの様子を隠し撮りするというやり方です。この手法は毎回同じ場所で暴行やカツアゲをされる場合に有効です。いじめっ子の心理としては、自分が最も安心できる場所で犯行に及びます。なので、全てのいじめがそうとは言いませんが、多くの場合この隠し撮りが使えます。

実際にどのように置くのかというと、図のように草や植木の中にカメラを仕掛けて、上からカモフラージュします。この時のカメラはリモコンで録画スタートさせるカメラでも良いですし、動きを感知して録画スタートさせるものでもどちらでも良いです。要はカメラを回し続けるのではなく、必要な時だけ撮れるカメラが良いです。

角度としては、いつもいじめられる現場が中心に映るようにカメラをセットします。万が一事件当日のいじめ犯行現場が、いつもより少しずれた場所であってもきちんと動画に収まるようにするためです。

2.自分主体のカメラ

2つ目はいじめられっ子自身がカメラマンになる手法です。先ほどの手法は必ずカメラがある現場に行かなくてはなりませんが、いじめられっ子自身が撮影する場合、どのような場所でいじめを受けても撮影可能です。その代償として、カメラで撮影していることがバレる可能性も格段に上がります。

カメラをいじめられっ子自身が回す場合、ペン型カメラや腕時計カメラ、メガネ型カメラなどを使用することができます。あなたのお子様が普段メガネをかけていないにも関わらず、メガネ型カメラを使用すると不審がられます。制服などに常日頃からペンをさしているお子様の場合、ペン型カメラを使用することが可能でしょう。

あなたのお子様の性格や身なりを十分に踏まえたカメラを使用することで、バレる可能性を低くしながら、間近での撮影が可能となります。

いじめられっ子自身が撮影する場合、たいていの場合その子と同じ視線での撮影となるので、録音の時のようなコツや注意点はありません。最も注意しなければならないことは、相手に撮影していることをバレないようにするだけです。カメラだとどうしてもレンズの部分は表に出なければなりません。その部分があるので、カメラでの撮影は危険が伴うため、どうしても探偵などに撮影を依頼した方が良いという判断になってしまいます。

まとめ

今回状況証拠と物的証拠に場合分けして、様々な種類の証拠についてお話ししてきました。言葉だけではなかなか動いてもらえない相手であっても、これらの証拠、特に物的証拠があれば動いてもらえる確率は格段に上がります。

できるだけ証拠能力の高い証拠を安全に集めるようにすることで、いじめ解決を促進させることができます。死と隣り合わせのいじめ現場の証拠を取り、できるだけ早くいじめ解決につながればと思っています。